愛媛県松山市の中心部にそびえる松山城は、美しい連立式天守と堅固な城郭構造で知られる「現存12天守」の一つです。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンでも一つ星を獲得したこの名城は、四国のシンボルとして多くの観光客を魅了しています。
この記事では、松山城の奥深い歴史から、絶対に見逃せない見どころ、そして最新の観光情報までを詳しくご紹介します。
松山城の歴史:戦国の猛将が築いた「難攻不落の城」
松山城の歴史は、関ヶ原の戦いで活躍した武将、加藤嘉明(かとうよしあき)によって始まります。
築城者と城主の変遷

松山城は、賤ヶ岳(しずがたけ)七本槍の一人として有名な加藤嘉明が、慶長7年(1602年)から約四半世紀もの歳月をかけて築城に着手しました。
当初、嘉明は5層6階の雄大な天守を建設しましたが、彼が会津へ転封となった後、城主は徳川家ゆかりの松平家へと引き継がれ、江戸時代を通じて15代にわたって松山藩を治めました。現在の天守は、一度落雷で焼失した後、江戸時代末期の安政元年(1854年)に再建されたもので、現存12天守の中では最も新しい建物となっています。
城郭の構造的特徴:連立式天守と「登り石垣」

松山城が「難攻不落の城」と呼ばれる所以は、その堅固な構造にあります。
- 連立式天守(れんりつしきてんしゅ): 大天守を中心に小天守や櫓(やぐら)を渡櫓(わたりやぐら)で結び、全体を強固な防衛ラインで囲んだ形式です。現存天守でこの構造を持つのは、姫路城と松山城の二つのみであり、極めて貴重です。
- 登り石垣(のぼりいしがき): 山腹から侵入する敵を防ぐため、麓の二之丸と山頂の本丸を、山の斜面を登る二本の石垣で連結させた珍しい防備手法です。豊臣秀吉の朝鮮出兵時に日本遠征軍が築いた倭城(わじょう)の防備手法を取り入れたもので、国内では松山城と彦根城にしか現存していません。松山城の登り石垣は総延長230mを超え、国内最大規模を誇ります。
文化財としての位置づけ
松山城は、天守をはじめとする計21棟の建造物が国の重要文化財に指定されています。これは、現存12天守の中でも、多くの櫓や門が完全な形で残っていることを意味し、城郭全体が歴史的価値の高い遺産となっています。
松山城の見どころ:絶景と歴史体験
松山城の見どころは、歴史的建造物だけでなく、その立地を活かした絶景や、最新技術を用いた体験にもあります。
天守からのパノラマビュー

標高132mの勝山山頂に位置する天守からの眺望は、松山城最大の魅力です。天守最上階からは、松山市街地の先に瀬戸内海の島々を一望でき、遠くは西日本最高峰の石鎚山系まで望むことができます。城主になった気分で、かつての城下町を見守るような雄大な景色をぜひご堪能ください。
防御の要、野原櫓(のはらやぐら)

本丸の北側に位置する野原櫓は、日本で唯一現存する望楼型二重櫓であり、天守の原型ともいわれる貴重な建物です。複雑な城郭の配置の中で、特に高い防御性を誇った櫓の構造を間近で見学できます。
歴史を体感!ARアプリ「攻略 松山城」
松山城の歴史や構造をより深く理解するために、オリジナルARアプリ「攻略 松山城」の活用がおすすめです。
城内のARマーカーにスマートフォンをかざすと、ドローンで撮影された映像や、在りし日の城の姿を再現した貴重な映像を視聴できます。学芸員おすすめのフォトスポットもアプリで表示されるため、松山城観光が格段に楽しく、学び深いものになります。
ロープウェイ・リフトで楽しむ空中散歩
登城口から山頂付近までは、ロープウェイまたはリフトで登ることができます。
- ロープウェイ: 複数人で景色を楽しみながら登りたい方におすすめ。
- リフト: 開放感あふれる空間で、勝山の自然を肌で感じたい方におすすめ。
どちらを選んでも、松山市街地を一望する空中散歩を楽しむことができ、観光気分を盛り上げてくれます。
アクセスと周辺情報
| 項目 | 詳細 |
| 所在地 | 愛媛県松山市丸之内1 |
| 登城方法 | 山麓駅「東雲口」からロープウェイまたはリフトで約3分。山頂駅から本丸まで徒歩約10分。 |
| おすすめ観光のルート | 二之丸史跡庭園(藩主の御殿跡)や、日本最古の温泉として知られる道後温泉が近くにあり、セットでの観光がおすすめです。 |
松山城の主要な見学ルートと所要時間
松山城の観光にかかる時間は、ロープウェイ・リフトを利用するか、徒歩で登城するか、また天守内でどれだけ時間をかけるかによって大きく異なります。
松山城見学の標準的な所要時間
| ルート | 登城方法 | 所要時間(目安) | 含まれる主な要素 |
| 標準観光コース | ロープウェイ・リフト利用(往復) | 約1時間30分 | ロープウェイ駅舎からの往復、天守内(本丸)の見学 |
| じっくり見学コース | ロープウェイ・リフト利用+周辺散策 | 約2時間〜2時間30分 | 天守内の詳細見学、本丸広場での休憩、主要な櫓や門、登り石垣などの見学 |
| 徒歩登城コース | 徒歩(往復) | 約2時間〜 | 往復約40〜60分(登り片道20〜30分)、天守内の見学 |
詳細な内訳
登城にかかる時間(山麓〜本丸)
松山城は標高132mの勝山に築かれた山城(平山城)のため、登城には以下の2つの方法があります。
| 登城手段 | 片道の所要時間(目安) | 特徴 |
| ロープウェイ / リフト | 約6分(乗車時間)+徒歩約10分 | 自然の景色を楽しみながら、快適に山頂駅(長者ヶ平)へ。 |
| 徒歩(東雲口/県庁裏登城道) | 約20分〜30分 | 坂道や石段を登ります。難攻不落の城の雰囲気を体感したい方におすすめ。 |
天守・本丸の見学にかかる時間
山頂駅に到着後、天守周辺の見学にかかる時間の目安です。
- 天守内の見学: 約30分〜40分
- 天守は地下一階、地上三階建てで、歴史的展示物や構造を見学できます。最上階の眺望を楽しむ時間も含みます。
- 本丸広場・主要櫓・門の散策: 約20分〜40分
- 天守を取り囲む連立式天守の構造や、戸無門(となしもん)、野原櫓(のはらやぐら)など、重要文化財に指定された櫓や門をじっくりと見て回る時間です。
周辺施設の見学
もし時間に余裕があれば、以下の施設をあわせて訪れることをおすすめします。
- 二之丸史跡庭園:
- 所要時間:約30分
- かつての藩主の御殿があった場所です。「恋人の聖地」にも選定されており、美しい日本庭園を散策できます。
ご自身の体力や滞在時間にあわせて、最適なルートをお選びください。
松山城は、歴史的な価値だけでなく、その美しさ、そして人々を惹きつける絶景の魅力に満ちています。ぜひ一度、この難攻不落の城を訪れ、その奥深い魅力を体感してみてください。





